風見鶏の家

風見鶏の家

2014年7月25日


丘の中腹に小さな古い洋館が立っていました。
洋館の屋根の上には洋館と同じ年老いた風見鶏がたっていました。

 

何も知らない独り立ちしたばかりの小鳥が風見鶏に話かけました。

 

私は小鳥、南からやってきたの。
あなたのお名前は?
どうしてあなたはずっとこの屋根にとまっているの?
この家がそんなに気に入っているの?

 

・・・私は風見鶏。
ここに立って風の動きを見るのが仕事なのさ。
この足かせがとれたとき、私は自由なれる。

 

小鳥は風見鶏の捕われの運命を気の毒に思いました。

 

西から風が吹いた。雨が降るかもしれないよ。

 

こんなに晴れているのに?
小鳥は内心疑っていましたが、ひとまず木の陰に身をひそめました。

 

風見鶏の言うとおり、しばらくすると黒い雲が空を覆い、刺すような雨が降り始めました。

 

風見鶏さんの言うとおりだったわ。

 

小鳥は感心しました。

 

その日から、小鳥と風見鶏は友達になりました。

 

君は南から来たといっていたね。
よかったら私に君の冒険の話を聞かせてくれないだろうか?

 

物知りの風見鶏に、自分の冒険の話をする時、小鳥はちょっぴり得意気になりました。

 

ある風の強い日、いつものように小鳥は風見鶏の家に遊びに行きました。
しばらくすると、クルクルクルと激しく風見鶏が回転しはじめました。

 

今日はおおきな嵐がくるかもしれない。はやくお家におかえり。

 

小鳥は挨拶もそこそこにあわてて住処へと帰っていきました。

 

 

 

その夜、風見鶏が予告した通り、小鳥が経験したこともないような大嵐が吹き荒れました。
長い夜を過ごしながら、小鳥はふと風見鶏のことを思いました。
こんな強い風の中でも風見鶏さんはあの屋根にたっているのかしら?

 

 

 

昨夜の風がうそのようにぴたりとやんだ朝の空を
小鳥は風見鶏の家に向かいました。

 

いつもの家に、風見鶏の姿はありませんでした。
足かせの部分が昨夜の嵐でポキリと折れていたのです。

 

挨拶もなく行ってしまうなんて・・・よっぽど急いていたのね。
でも、風見鶏さん、自由になれたのね。

 

小鳥はふっと小さく微笑んで、気まぐれな風に乗って飛んでゆきました。